今では世界レベルのゴーリーを多く輩出する国となったスウェーデン。かつてはカナダや他の主要国から大きく遅れをとっていた過去がある。2005年よりスウェーデンアイスホッケー協会でゴーリー育成プログラムの根幹に深く関わり、昨今の躍進を支えるキーパーソン、ゴールテンディング育成ディレクターThomas・Magnusson氏(トマス・マグナッソン)が登壇。
『スウェーデンアイスホッケー協会、ゴーリー大国への育成改革』AS Hockey Coaching Seminar(5/26 21:00~)と題してセミナーを開催した。
ゴーリー育成大国の出発地点
今では「ゴーリー育成大国」として知られ、世界のあらゆる国々がその育成手法を参考にしているスウェーデン。世界選手権での優勝、NHLへ多数の選手を送り出し、若い選手が次々と頭角を現している。
2005年以降、Thomas・Magnusson氏が陣頭指揮を取り改革をスタート。スタッフと共にコーチ育成の改革を行ってきたという。その理由は、「国内の全てのゴーリー育成を連盟スタッフでは見ることは困難である。」ということだった。
それではコーチの育成には何が必要か。コーチのための教育プログラムとライセンス制度の整備が必要という結論に至った。『かつてはゴーリーコーチの存在すらなく、重要視されていなかった。』Thomas・Magnusson氏が目指す育成改革がこうしてスタートした。
成功の基準の設定
2005年以降の改革後、世界選手権の優勝、NHLへの輩出、SHL(スウェーデンホッケーリーグ)など多くの実績をあげるも、それが成功の基準とはならなかった。最も大切なことは、コーチ育成プログラムによる成功の基準とは何か?を定義することにあったという。
下の図はSHL国内リーグにおけるImport(外国人)ゴーリーとスウェーデン人ゴーリーの人数の割合だ。2008年までImportが締める割合が46%と半数以上となっていた。あまりにも増えるImportゴーリー、国内ゴーリーの育成不足などの課題、現状を踏まえて、成功の基準を以下に設定した。
国内トップリーグでプレーできるゴーリーを量産する
全てのクラブにゴーリーコーチを設置すること(ジュニアからトップまで)
上記になった時、世界選手権での活躍、NHLへの進出が可能になる。2005以降、プロジェクトの取り組みの結果、Importゴーリーが22%となり、スウェーデンゴーリーが78%となった。
国内トップリーグでプレーできるゴーリーを量産する
全てのクラブにゴーリーコーチを設置すること(ジュニアからトップまで)
コーチングライセンスはレベル1〜3は、3年間継続して取得する。取得するライセンスによって指導できるレベルが決まる。これまでは275名のゴーリーコーチを育成し各地域のクラブで指導に従事している。連盟はどのレベルのチームであってもルール上、ゴーリーコーチの設置を義務付けとしている。仮にコーチを設置しない場合には罰金となるが、集金したお金は育成プログラムにプールされる。プールされた資金をもとに育成プログラムを受講しなければならず、結果ゴーリーコーチが必ず設置される仕組みとなっている。
上記に加えて、学び続け、共有する機会も提供を続けているとのことであった。
ここから何を学び、どのように行動していくか。
約50名ほどの参加者が集った。参加者の中には、日本アイスホッケー連盟、アジアリーグGKコーチ、現役アジアリーガーGK、日本女子代表ゴーリー、その他、全国各地で日々指導にあたっているコーチなどが一同に集まった。
Thomas・Magnusson氏は17年間、様々な育成のアプローチを試み数々の成果を出してきた。それでも『I can't see the finish line.』(自分たちの仕事に終わりはない。)とコメントを残し、飽くなき探求と自国のゴーリー育成に尽力すると締めくくった。
AS Hockeyでは、本セミナーを通じて学びだけに留まらず、実際にどのような行動を起こしていけるか。これからもこのようなテーマで指導者のアップデートを行い、育成環境をさらにいいものにし、子供がより楽しめ&成長できる環境とは何かを探求して行きたい。
私たちもまずは、「自分たちができる行動とは何か」と問いかけることから始めてみたい。
最後まで質疑応答に丁寧に回答いただき、素晴らしいの内容をプレゼン頂いたThomas・Magnusson氏には深く感謝を申し上げます。そして全国からお集まり頂いた参加者の皆さまにも感謝申し上げます。
ここに集った方々が日本の財産です。参加者から頂いた貴重なコメントを残します。
ゴーリーに関してほぼ素人なので、教科書が欲しいです 何から勉強したらいいかわからない・・・ goalie binderの日本語版が欲しいです
ライセンスを作るのは日ア連に作ってもらいそれを各連盟に落とし込めばいいのかな?と思いました。そして一番興味があったのは蟹的なGKパッドを各チームに提供したこと。裾野を広げる、GKに興味を持ってもらうにはいいのかと思いましたので連盟でも考えていきたいと思います。
日本の女子アイスホッケーチームにはフィジカル面の専門の指導者がほぼいない。代表チームのスタッフという立場から、フィジカルトレーニングの指導プログラムを作成して、発信していきたい。
日本全国のゴーリーコーチの基準となる物が必要だと感じた。そして、地域の壁を無くし情報を共有することが大切だと感じた。
日本のプロゴーリーとコーチが一同に会した合同練習会や意見交換ができるコンベンションが開催したいです。
様々な面で40年ビハインドになっている事に改めて衝撃を覚え、またおおよそ全てをカバーしているSWE連盟に感激しました。
連盟主導で改革をやっているかどうかが大きいですよね。日ア連の理事の人たちを交えてもっとこういった話ができるといいですよね。
みなさんの取り組みを良い形で伝えていくのがプレスの役割かと思っています。ぜひ現場にお邪魔させてください。
香川県で選手として活動しながら、地元の大学生goalieを指導しております。県内の各カテゴリのチームにgoalieを指導可能なスタッフが常駐しておらず、現状は私だけが指導をしております。ただ、私も会社員としての仕事があるので、全チームを指導できません。指導者を育てるほど知識も技術も持ち合わせておりませんが、各カテゴリーの指導者に情報・知識共有を行い県内のgoalieのレベルの底上げをしていきたいと考えております。
非常に勉強になった時間でした。自分自身常、常に学ぶ姿勢を持って頑張って行きたいと改めて感じました。
理屈的理論的に解析していくこと、重ねて個体(個人)を評価、育成が必要なのだと改めて感じました。
ライセンス制の必要性を感じました。また、全てのコーチが学べる事は素晴らしいと思います。
本日はありがとうございました。指導者をやろうとする人間がものすごく少ないです。県の連盟として指導者・選手育成プログラム化って必要必要といいながら何も出来ていないのでジュニアリーグを行いながら、言語化して見てもらえる冊子の提供をしていこうと思います。
勉強になりました。情報交換は継続したいですね
先ずは自分達が出来ることから指導に役立てていきたいと思います。現在も基本を中心として指導し、ゴーリーからの意見も聞きながらやっていますがもっと多くの意見を引き出せる状況を作りながら、個人スキルも活かしたキーパーの育成にあたっていきたいと更に思いました。
各地の連盟で同じ方向を向き取り組んでいかなければ、厳しと思いました。こういう場をもっと大きくして頂き、是非ライセンス制の必需性を訴えていかないといけないと思いました。
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