ホッケーでは問題を解決するために様々なコーチング・声掛けがありますが、次の言葉の共通点と違いは何でしょうか?
そこでパスを出せ・シュートを打て!
ゴール横の選手がフリーだけど見えてた?
誰にパスすれば相手ゴールに近づく?
まずこれらの共通点は、1つの局面の中でミスが起きた時に起こり得るコーチング・声掛けです。異なる点は、①は「実行」部分の結果に限定されているのに対し、②~③は「認知」や「判断」にフォーカスしたコーチング・声掛けによって改善を促そうとしている点です。
「判断を早く!」とは、洋の東西を問わず頻繁に使われる言葉ですが、「集中!集中!」等と同じく、まぁ曖昧なことこの上ない指示です。いろんな考え方がありますが、ASの考える「判断のプロセス」は、以下の3段階としています。
味方、相手、時間帯等、周囲の状況把握(インプット)
情報分析による最適なプレーの算出と選択(これが一般的に判断と言われてる部分)
最適なプレーの実行(アウトプット)
判断の土台になるのは”個人スキル”
このうち①インプットと③アウトプットには個人スキルが大きく関わります。②の情報分析と選択には知識と経験が関わります。
例えばパックを持ったDFがブレークアウトのパスのオプションを探してるとき、スキルに余裕がなければそもそも顔を上げて味方のFWやフォアチェッカーの位置を把握することができないので、インプット不足により当然情報分析もできず、アウトプットは適当なプレーとなり、ギブアウェイの可能性が高まります。
また、相手のプレッシャーが少ない時にはスキルが低いプレーヤーでも余裕をもって味方を探すことができるので「よーしハッシュマークに入ったウイングにパス出すぞ!」という最適なプレーをしようとしますが、やはりスキル不足によってアウトプットのプレーの質を高めることができず、足元にパスを出してしまったりします。そのレベルで戦える個人スキルが充分にあるのに、良いタイミングでパスやシュートができないプレーヤーももちろんいます。
『認知・状況把握』のために必要な個人スキル
正しい姿勢の維持
チェックショルダー
スケーティング(フォアバックトランジッション)
ムービングパックコントロール
『実行』のために必要な個人スキル
スケーティング with パック
パス&レシーブ
シューティング
動きの方の質(体の向き、角度など)
*実行にはフィジカル的な要素も関わりますがここでは触れません。
ポジショニングや戦術などの”知識”
それは②の情報分析力の不足であり、そもそもその状況下でのブレークアウトの一番良いオプションを知識として知らない可能性が高いです。また、小学校から中学校、大学からプロなど、競技レベルが上がった時に「プレーの判断が悪くなった」と感じる場合は、単純にプレースピードに個人スキル、情報分析が追い付いてないということです。
必要な知識として
ポジショニング
個人戦術(1on1の状況下で有利にプレーを進める手段)
グループ戦術(複数で有利にプレーを進める手段)
各ゾーンでのプレーの仕方
判断を養うためのステップ
というわけで「判断が悪い」と指摘された場合は、まず1-3のどこに問題があるのかを分析し、それに応じて指導する必要があるということです。また、指導する側としては、若いうちからクローズドスキルを高めつつ、少し負荷を落としたドリルやスモールエリアゲームでオープンスキルの練習をする必要があります。
クローズドスキルをひたすらやるだけでは判断力は養われませんし、逆に「ゲームの中で学ぶのが一番」とか言ってオープンスキルだけをやらせても「試合慣れ」以外の上達は見込めないということです。
手順
クローズドスキル(定形的トレーニング)
オープンスキル(非定形的トレーニング)
スモールエリアゲーム(1on1/2on2など)
ゲーム
判断の基準となるチームのプレー原則
そして最も重要なのは「ゲームのプレッシャーの中で確実に機能する、シンプルな判断の基準(チームのプレーの原則)となる知識」を与えるということです。すなわち、やたらと状況を複雑に分類しすぎて「相手と味方のポジションに応じてオプション1から10」みたいな判断はプロでも不可能ですし、かといって「何でも良く見て臨機応変に対応。経験を積むしかない」だと指導になりません。
チームのプレー原則の案
自分に向かってチェッカーが来てなければゴールに向かってキャリーする
チェッカーが来たら空いてる味方にパスをする(ここで「どこにパスすべきか」の判断に移行する)
それが無理ならパックプロテクションで味方の助けを待つ
みたいに2つか3つのオプションを判断する基準を与えられるとチームと個人が機能することになります。しかしながら、教えるのが最も難しいゲームの側面 であること。と同時に、そこに到達するまでには長いプロセスが必要であることも意味します。
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